〈interview〉ツタエノヒガサ。日々の暮らしを楽しむ物。

〈interview〉ツタエノヒガサ。日々の暮らしを楽しむ物。

公開日:2021/6/4

 

“ツタエノヒガサ”

 

「初めて日傘が欲しくなった」 

これはRENのスタッフが、『ツタエノヒガサ』に出会ったとき感じたことでした。

衣類を中心に活動している傳tutaeeが手がける日傘レーベル『ツタエノヒガサ』。凛とした佇まいから伝わってくる、つくり手の想い。ほかの日傘にはない魅力をご紹介したくて、傳のデザイナーである合田さん、店長の吉原さんにお話を伺いました。

 

 

 

 

日本らしさを伝える、ということ

隅田川のほとり。蔵前にアトリエと店舗『一月』を構え、2002年より活動されている「傳tutaee」

「傳」という漢字は「伝える」の旧字から。日本文化をこれまでの「日本らしい」という概念に留まず伝えること、ブランド独自の視点から表現することをコンセプトに活動されています。

 

 

浴衣の生地から、日傘の生地へ

傘を広げた時、内側からも柄を楽しめる。

これがツタエノヒガサの特徴であり、表裏なくきれいに染まる「注染」だからこその、粋な計らいです。手がけたのは浜松の染め職人さん。はじまりは浴衣の生地づくりでした。

 

 

「浴衣は、15年ほど前にセレクトショップさんから依頼を受けて作り始めたんです。”傳”というブランドの名前自体が和のイメージが強いので、浴衣をつくってしまうと"和のブランド"になってしまうと、躊躇っていたんですが。ただ、浴衣も洋服も、着て、纏って、装いを楽しむもの。そう考えるとやってみてもいいかなって」


楽しそうに語る合田さん。受け止めたものを、どんなふうに自分らしくしていくか。ものづくりの過程そのものを楽しみながら丁寧に向き合う姿勢を感じます。この、注染の生地との出会いが「ツタエノヒガサ」誕生へと繋がっていきました。

 

 

手仕事から、手仕事へ

日傘の柄は、合田さんの手描きによるデザインから生まれます。繊細な草花の模様や、大胆なモチーフ。それをもとに、染め職人さんが手作業で型を起こし染めの工程へと移ります。

合田さんの手から職人さんの手へ。手仕事だから生まれるわずかなズレや揺らぎもデザインのひとつであり、傳さんが表現の挑戦として大切にしていること。

 

 

傳さんが職人さんにお願いした最初の柄は、この”たて棒”の柄でした。

 

「型を起こさないで、線を引いてもらえないかなと」

 

1本1本、職人さんが手で線を引き染めていく。これは注染の技法を用いて、挑戦してもらった柄。合田さんと職人さんが、お互いにやりたいことを理解しているからこそ出来る技です。

 

 

染めては折り畳んでいくという注染の特徴により、折り畳んだ部分には染料が溜まり、「節」ができます。その偶然性、線のにじみも手描きならではの魅力。そうしてつくり出される日傘は、ひとつとして同じ物が存在しません。

 

 

甘くない日傘を


「もしも私が日傘を作るなら、もっとシャープな日傘が作りたい」

 

当時、合田さんが街中で目にしたのはレースや華やかな日傘。だからこそ、甘くない日傘を作りたい、そう考えていたそうです。普段の洋服とも相性が良い、シャープな日傘。

ツタエノヒガサには、洋服を作ってきた合田さんの気遣いが随所に散りばめられています。

 

 

「この丸いフォルムにもこだわっているんです」と、日傘の骨をひとつひとつ広げながら合田さんが見せてくれました。

傘を広げた時に生まれる、ゆるやかなカーブ。日傘を差した人が素敵に見えるかどうか。そんな観点から、フォルムや大きさを決めているのだそう。

 

 

手の平でしっかりと握ることが出来る肢の長さも、こだわりのひとつ。RENでお取り扱いさせていただく折り畳みの日傘も、折り畳みだからと「コンパクトであること」に重きを置かず、使う時の心地よさを大切にしてつくられています。

タッセルも、日傘に合わせてオリジナルで染め上げられたもの。

ツタエノヒガサ手にした時に「素敵だな」と感じるのは、そんな丁寧なものづくりへの姿勢を感じられるからではないでしょうか。

 

 

物と共に、一緒に暮らしを楽しむこと

「いい物だから」丁寧に扱うのではなく「いいと思った物だから」丁寧に、そして一緒に暮らしを楽しみたくなる。

ツタエノヒガサは、そんな日傘です。

なにかと、手軽さやスピード感にばかり焦点を当て、考えることが多い世の中。ささいな日常のひとこまを思い返しても、そんな部分に目を向けて行動しているように思います。

でも本当は、急ぐ必要のないことばかりです。

 

 

物を出す、物を使う、物を仕舞う。

そのひとつひとつの動作、時間を、楽しんでみること。
晴れた日にパッと日傘を広げて、光が通る柄を見上げる。帰ってきたら、骨組みをひとつひとつポキっと折り畳み、ゆっくり袋に仕舞ってみる。日傘を使うことひとつにしても、いくつもの動作があり、そこにはいくつもの楽しみが生まれます。

暮らしのなかでゆっくりと物と向き合う時間も、日々を楽しむ工夫なのかもしれません。

 

 

そんな工夫は、日傘の巾着型の収納袋のかたちにも。

「ちょっとだけお昼を買いに行くのでも、日傘は差していたい。そんな時、この袋にお財布とか携帯だけ入れて、出かけられるように」

無くしてしまうことが多い収納袋も、日傘を仕舞う役割だけでなく、バッグとしても使えるようにつくられています。つくり出した物には無駄がなく、小さなパーツひとつをとっても、それぞれにこだわりと役割が与えられています。

 

 

人の繋がりから生まれた物

「日傘が生まれたのは、蔵前という街だったからこそ」合田さんは、そう話します。

 

「注染の生地で日傘を作ったら素敵だろうと思っていた頃、蔵前の街で偶然に傘職人さんと出会ったんです」

 

近所でのふとした会話が出会いを呼び、そして仕事へと繋がっていく。世間話が仕事になる街。それはものづくりの街、蔵前ならではの特徴なのかもしれません。

 

 

「物」に出会うということは「人」に出会うことでもある、お話を伺いながらそんなふうに思いました。

 

考えた人、作った人、売っている人、使う人。

対面することはなくても、ここにある、作り出された物の中にさまざまな人の想いが詰まっています。物から繋がっていく、人との出会いもいいものです。

ツタエノヒガサと一緒に、日々の暮らしを楽しんでみてはいかがでしょうか。