かごを編むように、革を編む。
革を突きつめ続けて、15年以上の月日が経ちました。
私たちがブランドの立ち上げ当初より旗印としてきた「日用品として使い倒せる、軽くてしなやかな革」。その根っこはかたくなに変えず、新たな質感や表情のある素材を追い求めるなかで出合ったのが、「編む」という技法でした。それは、私たちもついぞ知らなかった革のチャームを引き出し、新しいもの作りの世界へと導いてくれたのです。
革で生まれる、透け感と軽さ。
素材は、やぎの皮をなめし薄く漉いたあと、細く裁断したものです(裁断すれば、傷が付きすぎてしまった革も活用できる可能性があります)。これをつなぎ合わせて長くした、平たいひも状のものを、木型に沿わせながら編み上げます。
同じ面積のバッグを作るのとくらべ、約5倍の革が必要です。その量もさることながら、それだけのてまひまも、惜しみなく詰まっています。
編み方は「石畳編み」と呼ばれる、カゴによく使われる技法。小石を敷き詰めたような編み目は規則正しく、透け感や軽快さも魅力です。
感じる、編み手の技術力。
編みは、インドにあるアトリエで行われます。
メッシュの技術に誇りを持ち、一丸となって取り組む村には、名うての編み職人がたくさんいます。その高い技術の証は、編み地の裏を返せばあきらかです。
通常、表面はきれいでも裏面はケバつきが目立つものも多くあるなか、見えない細部も抜かりなく、美しく編み込んであります。
さらに驚くべき点は、持ち手と本体のつなぎ方です。
強度を出すために他の留具をいっさい使うことなく、また縫製にたよることもしていません。革のしなやかさをあますところなく利用することで、バッグ全体に統一感がとれた、なめらかな印象になるのです。
理由は、やぎ革の「密度」でした。
RENのゴートメッシュシリーズは、持ってみるとすぐにわかる軽さが魅力です。それはなぜなら、やぎの革を使っているから。やぎは牛など他の動物の革とくらべても革の繊維密度が高く、薄く漉いても強度を保つのです。
またcamel / sage gray / black においては、植物タンニンなめしのため、使い込むたびごとにあめ色のつやが生まれ、革を育てるたのしみを味わえます。
編みの持ち味を、デザインにも。
重厚感や高級感を醸し出せるのがレザーバッグの良いところですが、そこまで気負わずしても、たとえば夏にさらりと持って出かけて欲しい。
ゴートメッシュシリーズには、そんな想いが込められています。
そこで最初に作ったのは、ランチバッグでした。これは、RENの代表作である豚革のランチバッグをもとにしながら、ハンドルや底面など、メッシュの特性を生かすようにこまかくデザインしなおしたもの。
後にさまざまな型をつくります。平手や丸手のハンドル。また特に近ごろ人気を集めているのは、タッセルの巾着タイプ。いずれもデザインは細部にまでこだわっていますが、いずれも編みの持ち味を生かすことを第一義にしています。
ほころびさえ、よろこびになる。
経年によってくったりと馴染んでいくのが革ならではの魅力です。
それに心惹かれるあなたに注目してほしいのは、メッシュゆえの個性を生かした、面白い育ち方をすること。
まず伸びます。伸び方はかたちやハンドルによって異なりますが、平手はその傾向が強くあります。そして時には革の継ぎ目がほどけ、時には編み目がほつれてしまうこともあります。その場合は、もちろん無償で修理させていただきます。
理由はあります。
あえてほどよく甘く接着することで、編み地の風合いを馴染ませたいから。全体から醸すムードが、これでてきめんに変わるのです。
人はいろいろなものごとと関わりあいながら、日々を編むように暮らしています。バッグがそこに寄り添うことができたなら、必ず愛おしく成熟していくでしょう。
どう育んでいくかは、あなた次第。これを、どうぞ意識して欲しいのです。