すぐに捨てられてしまうものは、本当に必要なのか?
私たちは常にその想いを心にとどめながら、ものづくりをしています。だからこそ、一度手にしていただけたなら、できるだけ長く愛用してほしい。くたくたになってもなお、使い続けてほしい。そのために経年を味として楽しめるプロダクトをつくっています。
では、「すぐに捨てられる」ものの代名詞といえば? レジ袋、そして紙袋でしょうか。
紙袋の機能美を、レザーバッグに。
レジ袋や紙袋。
素材こそ私たちの主義には反しますが、プロダクトとしてとらえた場合、そのデザイン性には一目を置いていました。最小の工程で、最大の容量を備えた合理性。折りたたんだときのコンパクトさ。構造に無駄がなく、まさに機能がそのままかたちとなった美しさがあります。そこにリスペクトをこめてつくったのが、レジ袋からインスパイアされた「レジブクロ」、そして今回ご紹介する「ショッパー」です。
まず、ご覧ください。紙袋の素っ気なさを体現すべく、見た目はいたってシンプルです。それでいて、スクエア型の角が立った美しいフォルムとハリ、たっぷりと容量を確保する広い底マチ、適当に置いても自立する安定性、とまさに紙袋のよいところを、レザーという素材であまさず表現しているのです。
ただ、その裏にはさまざまな工夫が凝らされていました。
ショッパーのくふう その1.
ハリとツヤ感のある素材を選ぶ。
そもそも「ショッパー」は、豚革を用いた新しい素材の開発から生まれました。
それまでつくっていた「ハリー」や「クラック」とはまた違った、バッグの形がカチッと決まるような素材。分厚いキャンバスをイメージしました。
そうしてできあがったのが、「トワル」です。豚革の表地をあえてバッグの裏面に使い、スエード面を特殊な顔料でコーティング。しっかりとした強度と、表面には撥水性を持たせています。経年変化が起こりにくいのも特徴です。この素材が、紙袋のイメージを具現化する手立てになりました。
ショッパーのくふう その2.
縫い目を隠し、アノニマス性を漂わせる。
街ゆくビジネスパーソンが、自身のバッグに入りきらない資料やお弁当などを、紙袋に入れて持ち歩く姿をよく目にします。
その理由はおそらく、紙袋が良い意味で自分のスタイルと遠いから。
いたずらに個性を放たず、コットンバッグやエコバッグのように生活感も出にくい。中身がなくなれば、折りたたんでバッグにしまえばいい。まさに、一石三鳥。使わない手はないでしょう。
紙袋のそうしたアノニマスな空気感を出すため、「ショッパー」の表面は、できるだけデザイン性を感じさせない、シンプルなルックをめざしました。
サイドの縁は切りっぱなしですが、開口部の上辺は折り返してあります。粗野と洗練のコントラストを効かせながら、品のよいバランスを目指しました。
両サイドにある吊り下げ式の内ポケットは、開口部を折り返した部分に縫い付けています。そうすることで表面からステッチが見えず、すっきりとした印象になります。
また持ち手のハンドル穴や、マチを開閉するスナップボタンには金属を使っていますが、極力目立たないよう、継ぎ目をフラットに近づけています。
ショッパーのくふう その3.
安定性を出すために、中底を縫い付ける。
適当に置いても自立し、入れたものが傾かない安定性の秘密は、マチの広さと中底にあります。しっかりとしたハリと強度がありながら、しなやかさも持ち合わせた芯材を慎重に選び、最終的に行き着いたのが0.8mm。重みのあるものを入れてもたわみにくく、折りたたんでキャリーケースなどに入れても型崩れしない厚みです。
また、芯材もバッグの底面と本体のあいだに挟み込んで縫い付けることで、ミニマルに仕上げました。
ショッパーのくふう その4.
持ち手は消耗品。付け替えられる。
トワルは経年変化しにくい素材ではありますが、ほかのレザーと同様に、使っていくと汚れやシワが出てきます。私たちがじっさいに使っていくなかで、とりわけ変化が大きいと感じるのは、ハンドル部分でした。そこも、紙袋をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
ハンドル部分を結び目によって固定しているのは、そのためでもあります。結び目をほどくだけで簡単に取り外せるので、汚れやくたりが気になってきたら、お気軽にハンドル交換をお申し付けください。
年経ち、少しずつ進化しています。
▲ 同じトワルを使ったバッグには、「スクエアダッフル」や「ランチバッグ」なども。
色表現の自由度の高さも、顔料を使うトワルという素材の面白さです。
最初は定番のホワイト1色からスタートしましたが、毎シーズン、色や形のバリエーションが増えてきています。アノニマスなプロダクトですが、ほんの少しだけ、自分らしさを加えられるように。少しずつ進化しています。
紙袋の何気なさや簡便さを表現するために、むしろ細部までこだわり抜いた「ショッパー」
どんなものでも、できる限り捨てない。ゴミを出さない。その姿勢に共感してくださる多くのひとにとっての、新しい選択肢になるように。そうして世のなかに寄り添い、選ばれ、長く残っていく。変わらないプロダクトに、いずれなっていくように。
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