〈interview〉ものづくりの風景 ー 小駒真弓さん

〈interview〉ものづくりの風景 ー 小駒真弓さん

 

2009年より 「UU ceramic and objects」 として活動されている小駒さん。日々どんなことを考え、どのように手を動かしているのか。ものづくりの過程を知ることで、作品から見えてくる世界も広がります。

 

 

「ものをつくるのは、小さな頃から好きでした。大学では焼き物を専攻していて、当時は主に大きな作品をつくっていました。彫刻のようなとても大きなもの」

 

磁器土とガラス釉薬を組み合わせた、UU ceramic and objectsのジュエリー。彫りを加えた人工的な模様と、偶然性を感じるガラスの不均一なふくらみ。自然のなかでゆっくりと生み出された鉱物のような作品。そのはじまりは、”失敗から生まれたもの"だったといいます。

 

「ガラス質の釉薬をたっぷりかけすぎると流れ落ちてしまう。本来ならそれは、失敗とされるものですが溜まったガラス状の釉薬がとても綺麗でした。それを作品に使うことができないかと、試行錯誤したことがはじまりです」

 

 

削ぎ落とすことで得られた自分らしさ

 

青や緑や白。小駒さんがつくりだす世界観は、色合いも形も一貫した空気感をまといます。ですが現在のスタイルにたどり着く以前は、”UUといえばこれ”という作風はなかった、と小駒さんは振り返ります。

 

「ターニングポイントは7年前。妊娠を機に作風を見つめ直したことが、ターニングポイントになりました。身体の自由が効かなくなることで、必然的にできることが限られてくる。作品の色や形も、削ぎ落としました。私の場合は、作風を絞ったことで逆に世界が広がりました」

 

 

作風を絞るにあたっては、好きな物や自分らしさについてとことん考えたといいます。

アトリエの棚に並ぶのは、鉱物と石の書籍。そして、自らの足で集めた"石たち"。

 

「これは、新潟県糸魚川の海岸で拾った石です。丸みが気に入っています。その棚にあるものも、地方の海岸や河原で拾い集めたもの。旅行に行くときも、その土地でどんな石が採れるのか調べて出向くこともあります。どんな石に出会えるか分からない。それも含めて石を集めることが好きです」

 

 

採集した石には採石地と日付けが記録されていました。鉱物や石への愛情と探究心は、小駒さんのスタイルをつくる"自分らしさ”のひとつです。

 

「変わらない一貫したコンセプトは、"手で生みだす結晶”。自分で生み出せる宝石をつくる感覚を作品へと落とし込んでいます。ジュエリーが鉱物だとしたら、レリーフはその原石をつくるイメージです」

 

 

小駒さんが手がけている、壁掛けのレリーフタイル。

 

「ジュエリーのように使うという視点が要らないから、より自由につくりたい物を表現できる。実は、レリーフのモチーフはすべて"人工物"から着想を得ています。航空写真で地上を見たときに人工物が密集している図や、都市に広がるビル群。そんな光景も、ある種の”結晶化”や自然現象に感じたことがきっかけでした」

 

自然界が生み出す偶然性のみならず、人が手を加えた世界からも偶然性を見出す小駒さんの目線。作品の経緯を知ることで、受け取るイメージや世界が広がっていきます。ガラスの中に閉じ込められた色や模様の起源。そんなことを想像しながら眺めれば、気がつくと時間が経ってしまいそうです。

 

 

「"ずっと見ていられる"と、よく言われます。時が止まる瞬間。生活の中で考えが止まる瞬間になってくれたら。きっとその時々で、作品の中で目が留まる場所や見えてくる場所、気になる所が変わると思うんです。そんなふうに日々、楽んでもらえたら嬉しいです」

 

 

 

つくり続けていくということ

 

「作風を絞った頃、いつかつくることに飽きる瞬間がくるのでは、という不安がありました。ですが7年が経った今まで一度も、その瞬間はありませんでした」

 

現在の作風に至り7年。そして、創作を続けて15年。デザインはいつも、つくりながら変化していくといいます。

 

「ジュエリーの場合は、デザインにもよりますが手を動かしながら形や模様をつくることがほとんど。はじめから決めているというよりは、ライブ感があるかもしれません。逆に、レリーフをつくるときは、デザインを決めるてからつくることが多いです。焼き物は、焼き上がるまでどんな作品になるのか想定できません。そこが面白いところでもあり、難しいところ」

 

 

「創作するうえで、一番好きな瞬間は作品を彫り上げ並べた瞬間でしょうか。窯に入れるまでの工程が自分の手でコントロールできる最後の段階。窯に委ねる直前までが、自分の仕事だと思っています。とくに粘土が乾く前の作品を見ているのが好きです。自分の手跡として残るから」

 



-PROFILE-

小駒眞弓さん

東京生まれ
2009年に設立した陶磁器ジュエリーブランドUU ceramic jewelry and objects主宰。2015年よりレリーフ作品制作を開始。

主な展示
2015年 個展「晶晶」 森岡書店
2021 年 2人展「うたかた」 evam eva yamanashi など

 


 

UU ceramic and objects

 

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