公開日 : 2025/08/13
「傷とムラ」についての、ゆるぎない観点。
どこまでも均一で整った工業製品ならではの美しさがあることも知りながら、けれど私たちRENは、“そうでないもの”を否定せず、むしろ皮に触れるたび、そこから製品をつくるたび、時を重ねた愛用品を見せてもらうたび、不完全さやゆらぎにこそ目を奪われてきました。
傷のないもの、ムラのないもの、それらは本当に“いいもの”だろうか? なんども問い直し、いまなお向き合っています。
はじめからの表情を、なかったことにしない。

▲裁断前の革。傷があり、毛穴やシボの細かさにムラがあり、ところどころでやわらかさが違います。
革は、生き物の皮から生まれます。ゆえにひとつとして同じ個体はなく、シボの出方や毛穴の様子、薄い血筋の跡にまで、つぶさな違いがある。その表情に、私たちは惹きつけられてきました。

たとえば定番生地の「BARE」は、きめ細かな天然のシボが特徴のやぎ革。シボの出方や色の濃淡はさまざまですが、すべて均すことはしません。その不均一さは、私たちの一人ひとり違うからだのふくらみや硬さ、節々の大きさや長さに合わさる可能性を秘めている。もちろん、それぞれの好みや気分にも。

だから、加工や装飾を最小限にとどめ、革の本来のままに。傷やムラも、できるだけ隠さずにおきたいと考えています。
素材を活かしきる、という設計の視点。
「HALLIE」に使われている豚皮は開発当時、一般的には「使えない」素材でした。細かな傷や色ムラがあり、毛穴も目立つことから、製品化の工程で大部分が捨てられたり、裏材や靴の中敷に使われたりしていました。
それでも私たちは、その皮の素朴さ、軽さや通気性に惚れ込み、個性を見つめ直してみたのです。
どうしても使えない部分はあります。それでもできるだけ無駄にしないよう、裁断職人の力を借りながら、素材の使用率を80〜90%にまで高めました。

▲革のしなやかな部位と硬めの部位を、パーツの必要に応じて使い分けたりすることで、1枚の革を隅々まで使い切ります。
けっして、傷やムラを諦めているわけではありません。革がどう染まり、どう育っていくかを見据え、どの部位をどんな製品に活かすか。そうした緻密な設計は、私たちのゆるぎない自負です。
変化のあとを否定しない。
ケアしながら使い、きれいな状態を保つことも選択肢のひとつです。クリームを塗って整えながら丁寧に育てるのも、革製品を使う楽しみ。
反対に、革ならではの変化に任せて、適当に扱うのもいいでしょう。光沢が増したり、よりやわらかくなったり、もとあった傷やムラもだんだんと馴染んでくるはずです。

▲光沢が出ると、小さな傷もさほど目立たなくなります。


▲大きな引っかき傷も、経年によるシワに紛れて馴染み、自然な表情に。
たしかなのは、革は、時間とともに変化すること。引っかき傷、小さな染み、日に焼けてできる色の濃淡。それらは“劣化”ではありません。
皮のはじめからの表情に、使うひとそれぞれの跡が刻まれていく。その愛おしい重なりが、革をいっそう味わい深くすると、私たちは信じています。
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