公開日:2025/05/07
〈interview〉
ミニショッパーのある風景
ookamigocco
井の頭公園がすっかり葉桜に囲まれた4月中旬。少し冷たい春荒れの風に翻弄されながら、待ち合わせの吉祥寺駅へ向かいました。今回取材させていただいたのは、ぬいぐるみ制作を中心に活動されているookamigocco(オオカミゴッコ)さん。ものづくりへの想いや、RENとの出会い、愛用中のアイテムについて話を伺いました。


愛情が詰め込まれた、表情豊かな動物たち
絵本がずらりと山を成し、壁には稲妻がきらめき、鳥のモビールが頭上を旋回。今回ご厚意に甘えてお邪魔させていただいたご自宅には、色も形も素材もさまざまな、ookamiさんご一家の「好き」が部屋めいっぱいに広がっていました。視界に入ったあれもこれも気になってしまい、本題そっちのけでつい脱線気味のスタートとなりました。


ookamigoccoさんは、マフラーのように首元に纏う「巻ぐるみ」をはじめ、動物のぬいぐるみ制作を中心に活動されています。型紙は使わずに、手に取った素材と向き合いながら、1針1針すべて手縫いで生み出されるその立体感や豊かな表情は、動物たちに対するookamiさんのあたたかいまなざしが滲んでいるようで。「キメ顔じゃない感じがかわいいんですよね」と話すのは、RENバイヤーの秋本さん。
「きっと、すごくリラックスしている時にしか見せない表情なんだろうなと思ったんです。生活を共にしたことのある人にしか表現できない顔というか。初めて写真を拝見した時もびっくりしたのですが、実際に巻ぐるみを身につけて来店してくださったookamiさんの姿に2度目の衝撃を受けました。ごく普通に『ちょっと散歩ついでに連れてきました』って感じで」(REN秋本)

もともとは売り物ではなく自分が欲しくて作り始めたという、巻ぐるみ。東日本大震災が起きた直後、家に1人でいることにだんだんと不安感が強くなっていた時にも、ookamiさんのそばにはもこもこふわふわの動物たちが居ました。
「念のため避難所にも行けるように必需品をまとめていたら、咄嗟にぬいぐるみに手を伸ばしていたんです。20代にもなってぬいぐるみを持って行ったら浮くかな…なんて考えも過ったのですが、『巻ぐるみなら、ファッションですけどって感じでしれっと一緒に居られる!』ってひらめいて。実際こういうものに触れて、撫でたりすることですごく安心できたので、もしかしたら、私と同じような状況下にいる人を助けることもできるのかな、ということもこの頃から考えるようになりました」(ookamiさん)

大人も連れて歩けるぬいぐるみ
ookamiさんとRENのご縁は、2023年に蔵前店で開催したPOP UP SHOPをきっかけにスタートしたのですが、「ちょうど心身に変化が起きて制作に悩んでいたタイミングだった」というookamiさん。RENバイヤーの秋本さんから連絡を受けた当初は、正直後ろ向きな気持ちの方が強かったのだと話してくれました。
「それまで素材はずっとフェイクファーを使用していたのですが、自分が化学繊維アレルギー持ちってことが分かったり、ベジタリアンだったのに妊娠を機にお肉を食べたくなったりして。そんな変化に戸惑っていた上に、レザーバッグを扱うお店でのPOP UPのお誘いということで、自分の方向性がブレるんじゃないかという怖さがありました。でも実際にお店に伺って秋本さんにお会いしたら、何よりそのお人柄に惹かれてしまって。RENの皆さんがものすごく丁寧にレザーに向き合っていることが伝わってきましたし、『この人と一緒なら』って前向きになれたんです」(ookamiさん)

「そう言っていただけて本当に嬉しいです。革という共通点もあったので、ookamiさんは私たちのものづくりに一際共感してくださった印象が強く残っています。自然の素材がお好きなんだろうなというのも感じましたし。RENのこともお客さんのことも一生懸命考えてくださって、その熱量が本当にありがたかったです」(REN秋本)
「振り返ってみると、『困ったら相談させてもらおう』と思えたのがすごくいい影響をいただいていたんだなと思います。RENさんのリアルレザーの端切れを制作に取り入れさせていただいたことで、今や自分もリアルファーやレザーを使うようになりましたし、『そうそうこれが作りたかったんだ』ってところへ辿り着けたように感じていて。巻ぐるみは、身につけるためにマフラー状にしていましたが、POP UPのために作ったバッグチャームなら、ぬいぐるみらしい形のまま大人でも堂々と連れて歩ける。それが叶ったのも嬉しかったですね」(ookamiさん)


2025年5月23日〜6月15日には、約2年ぶりとなるookamigocco POP UP SHOPを蔵前店・神楽坂店にて開催します。詳細については、RENのWEBサイト及びメルマガにてお知らせいたしますので、気になった方はぜひチェックしてください。
どこでも、どんなシーンでも使える
ookamiさんに使っていただいているRENのアイテムは、紙袋型が特徴のミニショッパー(black)。その片面には、前回のPOP UPで作っていただいたオオカミのバッグチャームや、アーティストのご友人に描いてもらったというイラストが賑やかに並んでいて。すっかり“ookamiさんらしいバッグ”に育った様子にとても嬉しくなりました。

「普段はついつい派手なバッグばかりを選んでしまうので、コンパクトなサイズ感で、どんなスタイルにも合わせやすい黒を選んでみました。このイラストはアクリル絵の具を使っているので、少しずつ落ちてきちゃうけどそれもまたいいなと。もう1つの面はまっさらなままなので、場所によってはこちらを正面にして使っています。息子の七五三の時にも大活躍しました。一見シックな印象なんですけど、ハンドルの結び目やステッチがカジュアルさも出してくれておしゃれですよね」(ookamiさん)

両サイドにはスナップボタンがあり、マチの開閉ができるのもミニショッパーの特徴。見た目以上にたくさん入るので、ookamiさんはペットボトルを2人分持ち運ぶこともあるそうです。内側には、仕切りのないポケットを2つ備えました。
「内ポケットって、細かく仕切られていて何をどこに入れるか指定してくれるものもありますよね。私はガンガン物を入れていきたいタイプなので、このミニショッパーは、ポケットの使い方の自由が残されているのも素敵だなと思いました。スマホがぽんっと入るくらい深いことに最初はびっくりして。息子の折り紙もよく入れています」(ookamiさん)

生きた証に愛しさが増す
ookamiさんにレザーの触り心地について伺うと、「もともと柔らかくて。いっぱい使い込んだ後のような味わいが最初からあった」とのこと。そんな話をしながら、ふとバッグの表面に小さなキズが入っていることに気がつきました。
「これは豚さんが生きていた時にケンカしたキズですね。こういったキズや色ムラは天然素材の証でもあるので、それぞれの魅力的な個性として、風合いを生かしながら仕上げているんです。キズは消えることはありませんが、使い込むほど革の表面にツヤが生まれて馴染んでいくので、その変化も楽しんでいただけたらと」(REN秋本)

ミニショッパーに使っている革は「ハリー」という、REN立ち上げ当初から大切にしているオリジナルピッグスキンです。豚革は比較的キズや色ムラが多く、一般的に裏材として使われてきた素材なのですが、とにかく軽くて高密度。薄くても丈夫で、通気性のよさ、布のようなしなやかさが魅力です。ミニショッパーの細身のハンドルは使ううちに少し伸びる傾向がありますが、手馴染みのいいハリーならではの柔らかさを感じながら、ぜひたくさん握ってお出かけしていただけたら嬉しいです。

《蔵前店・神楽坂店》POP UP SHOP 「ookamigocco」(2025.5.23〜6.15)
この度、約2年ぶりとなるPOP UP SHOP開催が決定しました。
5月23日(金)〜 6月1日(日)@蔵前店
6月6日(金)〜 6月15日(日)@神楽坂店
詳細については、RENのWEBサイト及びメルマガにてお知らせいたします。
愛らしい動物たちと一緒に、皆さまのお越しをお待ちしています。

-PROFILE-
ookamigocco
名前の由来は、孤独で自立したイメージを持つ“オオカミ”と、子どもの“ごっこ遊び”。大人になっても遊び心を忘れず、ぬいぐるみと一緒に暮らしたいという想いが込められています。2004年から「巻ぐるみ」の制作を始め、近年ではパペット絵本「Peek-a-Boo」制作、国内外での個展・グループ展開催など、多岐にわたる創作活動をおこなっています。
Instagram:https://www.instagram.com/ookamigocco/
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