〈interview〉ものづくりの風景 ー ookamigocco

〈interview〉ものづくりの風景 ー ookamigocco

公開日:2025/05/07

 

〈interview〉

ものづくりの風景
ookamigocco

友達として動物がそばにいた

3人兄弟の末っ子として生まれてから1人暮らしを始めるまで、常にご実家には生き物がいたというookamigocco(オオカミゴッコ)さん。なんとなく動物好きになったルーツの想像はしていたものの、犬、猫、鳥、ハムスター、カブトムシなど、その種類も数も予想を遥かに超える内容が返ってきました。

「母がよくもらってきてしまう上に、たぶん育てるのがすごく上手だったんです。そんな環境だったので、私も犬に話しかけたりしていましたし、動物に助けられて生きてきたというか。友達として動物がそばにいましたね」(ookamiさん)

 

美術系の専門学校に進学し、てっきりテキスタイルや縫製を学んでいたのかと思いきや、専攻はファインアート。8mmフィルムで景色を撮影し、音声に合わせてコラージュしていくような、アートフィルムの作家を目指していたのだそうです。

「卒業後は映画関係の会社に勤めつつ、映像の自主制作も続けていましたが、このまま仕事を続けるか自分の作品に専念するかで迷った時に、映像をコンペに出してみたんです。それでダメだったら諦めようと思って。そしたら選考を通過して上映してもらえることになって、その勢いで海外の映画祭にも応募したら、今度はドイツでも上映されることになりました」(ookamiさん)

ドイツはアーティストへの補助が手厚く、暮らしやすい国というイメージを持っていたookamiさん。しかし現地で知り合った作家たちによると、どうやら現実はそんなに甘くないことが分かってきました。それよりもさらに厳しい状況の日本を憂い、「もう映像を作るのやめようかな」なんて一言が思わず口からこぼれます。

「それを聞いた1人が、私が首に巻いていた巻ぐるみを指して『それを売れば?』って言ったんです。本人は冗談半分で言ったんでしょうけど、なぜかそれが心に残って、売れるんだろうか…と思いながら帰路についたのを覚えています。それまでは自分のためだけに好きなものを作っていましたが、震災での経験もあり、誰かが必要としてくれるならという気持ちが芽生え始めていました」(ookamiさん)

 

“ookamigocco”のはじまり

それから程なくして、以前から親交のあった絵本作家のミロコマチコさんから作品制作の相談が届き、ついにookamigoccoとして初めてお披露目する作品が誕生しました。

「『オオカミがとぶひ』というミロコさんのデビュー作の原画展開催にあたり、会場に飾る大きいオオカミを作ってもらえないかと言われて。それが皆さんに知っていただくきっかけになり、徐々に個展を開いたりお店に置かせていただいたりして、だんだん活動の比重が大きくなっていきました。RENさんとのご縁もそうですが、本当にタイミングと運が良かったなと思うことばかりです」(ookamiさん)

ちなみに“ookamigocco”というユニークな名前は、もともとは学生時代に友人たちと「もし将来みんなでものづくりをするならどんなユニット名がいい?」という話が弾み、オオカミのアニメーションを作ることを思って付けた名前だったのだとか。

「チームでの活動の夢は叶いませんでしたが、とても気に入っていた名前だったので、私個人の屋号として“ookamigocco”を使わせてもらうことにしたんです。“オオカミ”は孤独で自立したイメージも持っているなと思ったので、大人になっても、“ごっこ遊び”をするようにぬいぐるみと楽しく暮らしたい、といった新たな意味合いも生まれました」(ookamiさん)

ミロコマチコさんが描いたオオカミのタグは「大事なお守りのような存在」

 

どんなに迷子になっても
帰ってきてくれたライオン

ちょうど取材の当日は、個展「my one, the Lion」の会期中。重さも形も色も素材もそれぞれ違うライオンが、鮮やかなイエローのおうちに入り、絵本屋さんの壁でひと休みしていました。その入り口には、ookamiさんが息子さんのために作ったという1匹目のライオンの姿もありました。

「幼稚園に行くのが嫌だと泣いた息子に、お守りを作ってあげたいと思って。絵本からヒントをもらって、ポケットに入る小さなライオンを作ったんです。そしたら実際にポケットに入れてどこへでも持ち歩いたので、何度も迷子になってしまって、SNSにも投稿したり、諦めかけて息子と涙を流したこともありました。でも、不思議と必ず手元に帰ってきてくれたんです」(ookamiさん)

SNSを通じたライオン捜索の様子はあっという間に広がり、さらには販売を望む声まで聞こえてくるという、予想外の展開を迎えたookamiさん。その声に応えたいという一心で、今回の個展開催を急ピッチで決めたのだそうです。

「子ども用に作ったものでしたが、大人にも『欲しい』と言ってもらえたのは嬉しかったですね。今後は制作ペースはちょっと落ち着けながらも、こういった小さいものもこつこつと作り続けていきたいなと思っています」(ookamiさん)

 

今まで、ookamiさんの作品の写真を拝見するたびに、野生の動物と出会った時のような、ドキッとする感覚を不思議に思っていました。こうして今回ゆっくりお話しでき、実物を目の前で見て触れてみたことで、その理由がなんとなく分かったような気がします。かわいさも凛々しさも兼ね備えるookamigoccoさんの動物たちに、皆さんもぜひ一度会いに行ってみてください。

 

《蔵前店・神楽坂店》POP UP SHOP 「ookamigocco」(2025.5.23〜6.15)

この度、約2年ぶりとなるPOP UP SHOP開催が決定しました。

5月23日(金)〜 6月1日(日)@蔵前店
6月6日(金)〜 6月15日(日)@神楽坂店

詳細については、RENのWEBサイト及びメルマガにてお知らせいたします。
愛らしい動物たちと一緒に、皆さまのお越しをお待ちしています。

 

 

-PROFILE-

ookamigocco
名前の由来は、孤独で自立したイメージを持つ“オオカミ”と、子どもの“ごっこ遊び”。大人になっても遊び心を忘れず、ぬいぐるみと一緒に暮らしたいという想いが込められています。2004年から「巻ぐるみ」の制作を始め、近年ではパペット絵本「Peek-a-Boo」制作、国内外での個展・グループ展開催など、多岐にわたる創作活動をおこなっています。

Instagram:https://www.instagram.com/ookamigocco/

 

 

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