RENがBAREをバリでつくる理由。(後編)

RENがBAREをバリでつくる理由。(後編)

公開日:2024/10/11

 

〈interview〉

RENがBAREをバリでつくる理由。【後編】

 

むべなるかな、バッグはひとつの「もの」です。「人」ではありません。

だけど、やっぱり、どうしても。「ものの魅力」だけでは伝えきれないと、もどかしさを感じていたのがBARE(ベアー)。その名の通り、やぎの革でできたRENの人気シリーズです。

やわらかくて、軽くて、丈夫。ものとしての質の高さ、その上で知って欲しいのは「どういう人が、どこで、どう」つくっているか。

思えば運命的でした。インドネシアのバリ島に在住、創業初期からBAREの開発に携わる大切なパートナー、濵田さん。RENのデザイナー柳本との出会いは、20歳の頃。ふたりはとあるデザイン専門学校の、学生でした。

 

 

「柳本社長とは同じドレスデザイン科で、1学年上だったんですね。当時から彼は『いつか自分のバッグのブランドを立ち上げる』と明確な目標を持っていて。友人達でおうちに遊びに行って、集めた素材や、それでつくったバッグなど、いろいろ見せてもらってましたね」


その後、濵田さんはオートクチュールの学部へ。ずっと上皇后陛下のドレスをつくっていたという名誉教授のもとで指導を受け、みっちりと基礎を学びます。

 

 

オートクチュールへの道、そのたどりつかなさ。


「なので、私はどうしてもオートクチュールの世界に行きたかった。卒業後はいろんなアトリエの面接を受けたり、アーティストの衣装づくりを手伝ったりもしたんですけど、日本国内でやるには、なかなか厳しいことがわかってきて」

そこで濵田さんは、海外への可能性を模索しました。最初にめざしたのは、パリ。栄えたるメゾンブランドが居並ぶ、言うまでもなくオートクチュールのメッカです。

「父親の知人の紹介で、インターンとして入る道はありました。ただそこから独立して自分のブランド立ち上げとなると、少なくとも10年以上はかかりますし、お金も多く必要です」

その途方もなさに思いあぐねていた時、旅で何度も通っていたバリ島で店を出している日本の知人から「そのお店で、洋服のブランドの立ち上げをしないか」という話が舞い込みます。

「その経験を通じてバリ島でなら、やりたいものづくりができる。そう確信して、貯めたお金を持って自身のブランド立ち上げのためにバリ島に戻りました」

しかし、ここでも試練が待ち受けます。「当初はお店を出してやってたんですけど、インドネシアの場合はいい材料が自国になく、全部輸入なんです。取り寄せたところで、満足できるものは全然つくれなくて。仕事は順調になってはきたんですけど『こういうのをつくりたかったわけじゃない!』と、心が折れていきました」

 

 

洋服から、バッグ。そしてRENとの出会いへ。


そんなある日、街を歩いていると、店の軒先でバッグがディスプレイされているのを見つけます。「いたって普通のお店だったんですが、ものはすごくよかったんです」

尋ねると、当時ロンドン拠点に展開するバッグブランドを手がけている工場の直営だとかで「オーナーさんと話をしていたら、バッグなら革も金具も、国内ですごくいい材料が揃うと聞いて。それから自分でバッグのほうのブランドを始めることにしたんです」

そうして取引先を探している中で、再会したのが柳本でした。「友達から『彼ならバッグのブランドを自分でやっているから、何かアドバイスしてもらえるんじゃない?』と聞いて、会いに行って。そしてバッグを見せたら、すっごいびっくりされたんです」

 

 

その驚きの理由は、あまりにも高いクオリティだったから。

「『こんなにいいの作れるの!』って言われました。日本の工場でもこんな丁寧な仕事は難しいよ、と」

そう、それは濵田さんがオートクチュールを学んでいた頃から養い続けてきた縫製技術、また自身の持つセンスが、ようやくフェアに認められた瞬間でした。

「もともとは、自分のブランドをやるために会社をつくったんです。だけどその年に縫製工場をはじめて、それからはRENのバッグを15年間、毎日つくり続けています」

 

 

オートクチュール、をも超えるクオリティ。


そこまでの高い縫製技術とは、いったいどのようなことなのでしょう。

「私たちのチームは工場を経営して15年くらいになるんですけど、スタッフには私が学んだオートクチュールのやり方を、一から教えます。なので、もともとすごい優秀な職人さんなんですけど、ここでバッグが縫えるようになるまで、だいたい1年半はくらいはかかるんです」

 

 

通常だと、縫い目の幅は4.5mm〜5.2mm。「いわゆる“1mm以下”の話をするんです。なのでそれが0.3mm違えば、リジェクト(不良品)とまでにはならなくとも、みんなで頭抱えます」

丈夫さにおいてもしかり。「本当に強く、ちゃんと丁寧に。下糸を引き抜いて3回ぐらい縛った上に、その結び目と残り糸を中に引き入れて、5センチくらい残すんですね。そうすると強度も全然違いますし、修理もしやすくなる。これはもう、オートクチュールでもそこまでやってるところは珍しいんじゃないかと思います」

 

 

なぜ、そこまでして。やはり、この質問を投げかけてしまいます。

「私の学生の頃から目標にしていたのが『次の世代に渡せるものづくり』だったんです。たとえば2〜3年で使わなくなって、クローゼットの中に入っちゃっても、また使おうって思っていただけるような。私があの時、フランスにやっぱり行かなかった理由は、その世界で有名になるよりも、人の記憶に残るものづくりがしたいから。芸術品ではなく、たくさんの人にずっと使ってもらえることが、私にとっての幸せです」

 

 

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