2022/09/02 UP
気品あるニットソーのように
シープメッシュの存在感。
とにかく素材ありき。そこにどれだけ心が奪われるか。シンプルに「好き」と思えるかどうか。誤解を恐れずに言うならば、この素材であれば、どんな形だってかまわない、と思えるような。
これが、私たちの基本姿勢です。そういう意味で、最もRENらしいと言えるのが、シープメッシュのシリーズかもしれません。
「インドで、こういうこともできるんですが」。
きっかけは、海外工場との取引を仲介する方から紹介された、一枚のシートでした。それは羊の皮をひも状にし、「網代(あじろ)編み」という製法で編み込まれたもの。その目の細かさを見て、機械編みだと思っていたのですが、なんとすべて手で編まれたものだというのです。
一目惚れでした。
しなやかな手編み。
シープメッシュの魅力。
シープメッシュの生地は、本来手袋などに用いるために鞣されたシープスキンを細く裁断し、「網代編み」という製法で編み上げたもの。シート状の革を裁断・縫製することで、バッグを形成しています。洋服でいうとニットソーのようなつくりかた。そのため、デザインの自由度も高いのです。
細く裁断したシープスキンは最初からくったりとやわらかいですが、そのしなやかな質感をさらに生かそうと、通常より多くのオイルを含ませてあります。さらに色合いをととのえるための顔料にもオイルを配合し、ごく薄く吹き付けなじませることで、手に吸い付くようなタッチを追求しました。
やわらかいものを、
やわらかく魅せる。
一枚のシート状の素材から感じられるくったりとしたやわらかさを、きちんとやわらかく魅せたい。とりわけ、「持ったときの美しさ」にはこだわりました。
荷物をどのくらい入れたとき、どんな風に“落ちる”か。バッグの曲線はどのように変化するのか。肩にかけたときは? 手に提げたときは? そうしたことを検証しながら、「サークルバスケット」のカーブは、何度も見直しました。
芯材を使わず、また開口部に金具をつけず、紐を縛って閉じるデザインにすることで、とても軽やかに仕上がりました。
デメリットがあるからこそ、
メリットが引き立つ。
目を見張るやわらかさが魅力的な反面、強度のなさが、羊革にはあります。バッグには裏地をつけ、荷物などの負荷が革に直接かかりにくいよう設計していますが、それでも、使うほどに型崩れやゆがみが生じます。
ただ、おりおりに愛用者のバッグを見せてもらうことがあると、とても素敵に変化している様子を見ることがあり、うれしくなります。
大事に使えば、艶が出て、使い手の個性がにじむバッグに育つ。やはり雑に扱ってしまうとそれなりの使用感が出ますから、どんな性格のひとにでも勧められるバッグではないかもしれません。
それでも、愛情を込めて使えば応えてくれる、そんな素材です。
一般的には“デメリット”と言われようが、私たちにとっては革ならではの魅力、そう感じることが多くあります。
たとえばハンドルの四つ編みは、インドの工場ならではの手作業によるもの。細かく見るとディテールに甘さも感じられますが、それは同時に工業製品にはない“味”ともいえます。 デメリットは、かならずしもだめではない。
それが、私たちRENが革製品に夢中になるゆえんのひとつです。
考えながら、悩みながらつくる、
というRENらしさ。
かねてから、「サークルバスケット」のような形のバッグをつくってみたいと思いつつ、いい素材とめぐりあえずにいました。
ほかの革で試作しても、思い描いた形にならないのです。くったりとしたやわらかさを備えつつ、その弱点を、裏地を張ることでおぎなったからこそ、行き着いた完成形。
素材と形がぴたりと合致したのです。
RENで新しい製品をつくるとき、最初からシリーズ展開などを予定してスタートすることは稀です。
まず素材と向き合い、つくりたいと思える製品を考えます。
革を一枚広げた状態で見るのと、商品になった状態で見るのとでは印象はまるで違うため、思い描いたように製品化できないことも頻繁にあります。
反面、コンセプトやシリーズ化をとくだん目指していないからこそ、自由にのびのびと、トライ&エラーを重ねられる。やりながら考えていくことで、思いがけないよさを発見できる。
何度も修正を繰り返した「サークルバスケット」の曲線には、いまでも、思いがけない歪みが生じることがあります。でも、そのアトランダムさもまた革の魅力。
スマートではないかもしれません。
でも、それが私たちのものをつくる姿勢です。
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