公開日:2025/06/24
〈interview〉
レジブクロのある風景
ETONOVA 吉田愛さん
梅雨入りの気配を跳ね返し、青空が広がった6月上旬。辺りがお祭りムードで賑わう中、吉田愛さんがREN蔵前店へお越しくださいました。アパレルブランド「ETONOVA(エトノバ)」を立ち上げ、古着やハギレを作品に仕立て直している吉田さん。ものづくりへの想いや、RENとの出会い、ETONOVA×REN コラボレーションバッグについて話を伺いました。


「似顔絵」を宿したユーモラスな一点もの
ゴッホ、アインシュタイン、ヴィーナス誕生。世界中の名だたる有名人や絵画の登場人物たちが、服やバッグとして私たちの日常の中にひょっこり顔を出す。唯一無二のアイコニックなモチーフと、ゆるやかなステッチ、布の質感や色合いが絶妙に混ざり合ったETONOVAの世界に、思わず目を奪われた人も少なくないのではないでしょうか。
2017年にETONOVAを立ち上げ、古着をリメイクしたり、ハギレのコラージュを装飾したアイテムを生み出してきた吉田さん。普段の製作風景を窺い知れるような情報が世間に出ていなかったので、あれもこれもと質問を投げかけてしまったのですが、快く答えてくださいました。てっきり西洋画やアートがお好きな方なのかなと想像していたのですが、ご本人曰く「広く浅くいろんなものが好きなので、熱心に語れるほどではなくて…」とのこと。
「昔から人の顔のイラストを描くのが好きで。似顔絵って、多少崩してもなんとなく伝わるし、モチーフとして面白いなと思ったんです。スマホを眺めて気になった人の画像をストックしておいて、水で消えるペンで布に模写しています。刺繍には、直線縫いしかできない職業用ミシンを使っているので、曲線を描くためにはちょこちょこ手を止めて角度を変えなければいけないのですが、そのおかげで線が滑らかになりすぎず、いい具合にいびつな仕上がりになるのも気に入っています」(吉田さん)

さらに製作工程について話を伺ったところ、型紙は使っていないと聞いてスタッフ一同とても驚きました。あるモチーフのアイテムを複数点作る場合も、「毎回一発勝負な感じで直接布に描いています」とのこと。
「過去の自分に挑戦するような感じと言いますか、『もうちょっと上手に描けるかな』と思いながら描いています。均一のものを量産する、という作り方にあまり興味がないのかも。続けるうちにきっと自分自身が飽きてしまうだろうなと思いますし」(吉田さん)
下地となるTシャツやハギレのコラージュも、刺繍のステッチも、何一つとして同じものがないETONOVAの作品。その時その場で目が合ってしまったが最後、手に取ったその子の個性が愛おしさに替わるのは一点ものならではの魅力ですよね。

思いに寄り添ってきた素材を、仕立て直す
ETONOVAとRENのご縁がつながったのは2021年頃のこと。偶然SNSで流れてきたTシャツの写真をきっかけに、RENバイヤーの秋本さんをはじめスタッフ間で話題になりました。
「すごくかわいいなと一目惚れしてしまって。ダメ元で『うちでPOP UPをやりませんか?』とご連絡をしたら、快く作品を預けてくださったんですよね。その後も定期的にPOP UPを開催させていただいていますが、RENに来てくださるお客様がすごくETONOVAの世界観にグッときているのを感じています。相性が良いというか。RENスタッフはもちろん、お客様も、みんな“好きなもの”の空気感が似ているんだろうなぁとよく思うんですよね」(REN秋本)
「ETONOVAを始めたばかりの頃は、イベントに出てお洋服を販売することが主だったのですが、コロナ禍でそういった機会がなくなってしまって。ちょうどその時に、RENさんのようにお店からお声がけいただくことが増えていきました。私はオンラインショップもやっていないし、面識がないのに連絡をいただけるのって、とてもすごいことだなって思って。『行ったこともないお店だけど本当に大丈夫かな』と思いつつも、とりあえず1回送ってみて、それで皆さんに受け入れてもらえたら嬉しいなって。今日ようやく秋本さんにお会いできましたけど、DMの文面から伝わってくるお人柄通りの方で、すごくしっくりきました」(吉田さん)

「どんなにすてきな作家さんとPOP UP展示の機会をいただいても、やっぱり実際に店頭に立つスタッフの熱が追いついてこないとうまくいかないんです。でもETONOVAの場合は、RENとのコラボバッグの製作が決まった時もみんなで『欲しい〜!』って大盛り上がりして。それはもしかしたら吉田さんがハギレや古着を使われていたり、素材を隅々まで大事にしようっていう、ものづくりにおいて大切にしている価値観が近いのもあるのかなって。色づかいも綺麗じゃないですか」(REN秋本)
「ありがとうございます。なんやろ、新品のものばかり使うのではなくて、もともとあったものを活かせたらなと思っています。古着は昔から好きなんです。普段の買い物もしょっちゅうは行かないけど、すごく好みのものに出会ったらパッと買ったりはする。でもたぶん、1つのものを長いこと使い続けてると思いますね」(吉田さん)

コラボレーションバッグ
ETONOVA ×「レジブクロ」ができるまで
今年、RENが20周年を迎えたことを記念して、コラボレーションバッグの製作を吉田さんに依頼。RENのミニバッグ「レジブクロ」を、ETONOVA作品でお馴染みの刺繍やコラージュで飾ってくださいました。最初に吉田さんからご提案いただいたのは、バッグの素材感を活かした、刺繍のステッチのみのパターン(写真左)のみでしたが、布のハギレをコラージュしたパターン(写真右)も追加提案くださり、最終的にどちらも製作いただく運びとなりました。
「うちのメンバーはどんな提案をいただいてもきっと気に入るだろうと確信していたので、『自由にやってみてほしい』とお伝えしていました。逆に無理なお願いをしていないだろうか、泣きながら作業されていないだろうかと心配していたので、たくさんご提案くださって本当にありがたかったです」(REN秋本)
「ステッチのみのパターンを提案して、それをもう会議に通していただいたって聞いたのに、『やっぱり布を使うものいいかもしれない』と思い直して後から追加でお送りしたんです。裁断された革をお預かりして、刺繍をしたら返送し、それをバッグに仕上げていただくという進め方だったのですが、ちゃんと形になったものをこうして並べて見ると、皆さんに喜んでいただけるものが作れてよかったなと思えました。革を製作で扱ったのは今回が初めてで、もし縫い目を間違えたら穴が残っちゃいますし、緊張感は常にありましたがすごく楽しかったです」(吉田さん)
レジ袋のように、
気楽に使えるミニバッグ
RENの初期から製作している「レジブクロ」は、その名の通り、私たちの暮らしに慣れ親しんだレジ袋をモチーフにしたトートバッグ。素材には、RENオリジナルピッグスキン「ハリー」を使用しています。豚革の魅力をより多くの方に知っていただきたいという思いも込めて企画したバッグだったのですが、硬すぎず柔らかすぎず、とにかく軽く、薄くて丈夫な「ハリー」を使っているからこそ、レジブクロとしての気楽さや収容力を一層引き立てることができたように思います。
また発売当初はひとまわり大きなサイズで作っていたのですが、お客様の声を受けて調整を重ね、ペットボトルやA4ノートがすっぽり入る使い勝手の良いサイズ感に仕上がりました。シンプルな造りはギフトにもおすすめです。
今回のETONOVAコラボバッグは、REN定番色の3色(camel / pink beige / black)がございます。吉田さんは「ピンクベージュが一番好きかな」とのこと。どんな服装やお出かけ先にも合わせやすいベーシックなカラーなので、ぜひ気負わずがしがしお使いいただけたら幸いです。

《ETONOVA×REN コラボレーションバッグ》
https://ren-webshop.com/blogs/info/renxetonova-2025/
2025年6月7日(土)〜
WEB SHOPおよび各直営店舗にて販売
・事前予約、取り置きは承っておりません。
・各店数量限定入荷のため、追加納品の予定はございません。
・一点ものにつき、各店ラインナップは異なります。
・在庫状況は各店にてご確認ください。
《ETONOVA POP UP SHOP》
蔵前
2025年6月7日(土)〜15日(日) -終了-
神楽坂店
2025年6月20日(金)〜29日(日)
ジョイナス横浜店
2025年7月4日(金)〜21日(祝月)
阪神梅田店
2025年7月11日(金)〜
ETONOVA×REN コラボレーションバッグのほか、シャツなどさまざまなアイテムがございます。ぜひお手に取ってご覧ください。

-PROFILE-
ETONOVA
2017年に吉田愛さんが設立したブランド。“思”という漢字の中に、“エトノバ”というカタカナのパーツを見立てたことが由来。誰かの思いに寄り添ってきた服やハギレを仕立て直し、日々のちょっと気分の上がるアイテムを製作しています。
Instagram:https://www.instagram.com/et.nova
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