公開日:2025/04/18
〈interview〉
Zipスクエアショルダーのある風景
Jacquard Works 後藤良子さん
早春らしい陽気に恵まれた3月の初め。織物の街・群馬県桐生市で創業119年を迎えるSUSAIの工場を訪ねました。群馬と東京の二拠点生活を送りながら、ファクトリーブランド「Jacquard Works」のディレクターを務めている後藤良子さん。ものづくりやまちづくりへの想い、RENとの出会い、愛用中のアイテムについて話を伺いました。

世界に誇る、桐生の職人が手掛けるジャカード織
桐生駅に降り立った私たちを待ち構えていたのは、軽快な八木節の発車チャイムと、ぴりりと冷たい赤城下ろしの空っ風。熱烈な上州名物の歓迎に思わず足を止めつつ、駅まで迎えに来てくださった須永社長のご案内で、後藤さんの待つアトリエへ向かいました。


機織り屋として1906年に創業したSUSAI(須裁株式会社)は、和装用生地、輸出向けのドレス用生地、ジャカード織生地の生産など、時代に応じたものづくりを続けてきました。大正時代に建てられた3連のノコギリ屋根工場は今も現役で、2020年にはその一角をリノベーションしてアトリエショップを開設。後藤さんがディレクターを務める「Jacquard Works(ジャカードワークス)」など、ファクトリーブランドによるバッグや帽子などの開発・販売も積極的におこなっています。
「ジャカード織の魅力は、何種類もの素材の組み合わせによって複雑な表現ができることだと思います。加熱の適正温度や張力の違いなど、繊維素材それぞれの性質を利用して色を染め分けたり凹凸を出したり。とある海外トップブランドのお客様が『他では断られてしまったアイデアも、桐生の職人さんなら解決してくれる』と言ってくださったこともあるそうで、桐生で脈々と受け継がれてきた技術が世界的にも評価されていて。次の世代へつないでいきたいという想いが一層強くなりますね」(後藤さん)



布の上から絵柄を印刷するプリント生地と異なり、織物は糸1本1本の構成によってデザインが生地自体に織り込まれます。色々な織物の中でもひときわ工程に手数のかかり、繊細な職人技術が求められるジャカード織。凝ったデザインほどそれがお値段に反映されるため、おもしろい表現や加工を施した生地があっても、服地などをお求めになるお客様にとってはどうしても検討対象から外れることが多くなります。
そこで後藤さんは、これまでのように注文の入った生地を製作して卸すだけではなく、自分たちが主体となって魅力的なジャカード織生地を作り、それを活かした製品をファクトリーブランドから販売することを提案。製品自体が技術のショーケースにもなり、より多くの方にジャカード織を知っていただくきっかけが広がりました。生地や製品を1から考えるというチャレンジに初めは苦戦したものの、今では各々がアイデアを持ち寄り、楽しみながら取り組んでいるのだそうです。
「どの業界にも自社ブランドが増えていると思うのですが、うちもちょっと1回外に出てみて、既存の商流の中で思い込んでいた固定観念を解きほぐしていくことが必要なタイミングなのかなと。やっぱり挑戦してよかったなと思うのは、ジャカード織の世界に触れて『感動した』という方にたくさんお会いできたり、どういう方がどういうものを気に入って、どんな使い方をイメージして買ってくださるのかが直に分かることですね。以前、百貨店さんでPOP UPを開いた時に、生地の作り方について熱心に質問してくださるお客様がいらしたのですが、すごく迷われて、最終的には2つも買ってくださって。しかも翌日、それを手に下げてまたお店に寄ってくれたんです。直接使い手にお会いできる場所に出ないと見られなかった光景だったので、本当に嬉しかったですね」(後藤さん)


柔らかいのに頼もしい。
RENのバッグは「服を着るような感覚」
今回の取材で驚いたことの1つが、想像以上に後藤さんがRENのヘビーユーザーだったこと。「会社務めだった頃、偶然立ち寄った先でRENさんのトートバッグに一目惚れしてしまって。その場で思わず買ったのが最初です」と話しながら、ツヤツヤに使い込まれたバッグや財布をいくつも見せてくださいました。この日持ってきていただいた以外にも、まだ家に3つくらいあるのだとか!

「どんなものでも、一目惚れして即決したものほどその後もずっと好きなままですね。その日買うのはやめて一旦検討するということはほとんどしなくて、『これだけ気に入るものなら間違いない』というその時の直感を信じるというか。RENさんのアイテムは革のくったり感がかっこよくて。すごく体に寄り添ってくれるんですよね。柔らかいのに頼もしい、服を着るような感覚。周りの人にもたくさん勧めてます」(後藤さん)

後藤さんが肩にかけているのは、やぎ革製のzipスクエアショルダー(Mサイズ)。15インチのノートパソコンも収納できる大ぶりのサイズ感で、四角いフラットなつくりなので書類やファイルが整理しやすく仕事カバンとしても活躍します。こちらの「ベアー」というRENオリジナルのゴートスキンは、きめ細やかで柔らかいのに、摩擦に強く型崩れしにくいのが特徴。最低限の染料とオイルで鞣して、自然な風合いをそのまま届けたいとこだわりました。
「バッグはパソコンが入ることを前提に選んでいて。これはショルダーを結んで好きな長さに調節できるのもいいですよね。両手を空けたい時とか荷物が増えて重たい時は斜めがけにしています。今改めてバッグを触って気付いたんですが、中に入れたものによって、角張った部分が当たったり重みの余韻が残ったりして、どんどん風合いが出てきているんでしょうね」(後藤さん)

左から zipスクエアショルダー(black) / ミニウォレット(indigo blue)/外ポケウォレット(dark gray)
そしてご持参いただいた2つのお財布は、三つ折りのミニウォレットと、外にコインケースが付いた外ポケウォレット。どちらも見た目以上の収納力で、機能性とコンパクトなサイズ感が人気です。使い続けることで革が柔らかくなり、窮屈さも和らいでいくのも楽しいアイテムです。
「私はわりと何でもガシガシ使っちゃうんですけど、このお財布はジッパーも全然壊れずきれいなまま。カードやコインをぎゅっと入れちゃっても、ちゃんと応じてくれるんですよね。手馴染みがよくてすごく使いやすいです」(後藤さん)

実はREN STUDIO WORKSでは、ブランド発足当初からJacquard Worksの商品撮影をお手伝いしています。年に2回ほど蔵前のスタジオまで新作をお持ちいただき、撮影を通じて、よいものを「伝え、残す」ための時間をご一緒しているのですが、RENスタッフが桐生を訪ねたのは今回が初めてのこと。目の前で刻一刻とものが生み出されていく音や空気がとても心地よく、刺激的で、Jacquard Worksの魅力をより深く体感できた1日となりました。
ジャカード織生地の製作工程について詳しく知りたい方は、SUSAIが発信しているnoteの記事もぜひご覧ください。
https://note.com/susai

-PROFILE-
Jacquard Works[ジャカード・ワークス]
ジャカード織物の機屋・SUSAIのファクトリーブランドとして2022年に誕生。ジャカード織物ならではの糸1本1本が織りなす豊かな表現や、凹凸感のある風合いはそのままに、カジュアルに日常使いできる製品を作り続けています。
URL:https://shop.jacquard-works.jp/
後藤良子
Jacquard Worksディレクター、株式会社URBANWORKS代表取締役。関東近郊のまちづくりプロジェクトに多く携わる傍ら、地域産業や経済が深く結びついた街のあり方に強い関心を持ち、その中でスタートアップ等の企業支援にも関わっています。SUSAI(須裁株式会社)には2020年頃から参画し、2022年にファクトリーブランドJacquard Worksを立ち上げました。
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