公開日:2024/06/6
〈interview〉
ゴートメッシュのある風景
パン屋・粉花
三社祭を翌週に控えた5月初旬の浅草。軒先では提灯を飾りつける準備が着々と進み、初夏を告げる大祭の足音を町全体が待ち侘びているように見えました。今回取材にご協力いただいたのは、そんな下町浅草でパン屋・粉花(このはな)を営んでいる藤岡真由美さん恵さん。REN創業当時からお付き合いのあるお二人にゴートメッシュのバッグを使っていただき、生まれ育った浅草の魅力やものづくりにまつわる話を伺いました。
何気なく置いただけなのに様になる
ゴートメッシュは、細く裁断したやぎの革を「石畳編み」という技法でつなぎ合わせたメッシュバッグのシリーズ。その中から、真由美さんには黒のバスケット(Sサイズ)を使っていただきました。
真由美さん「黒がもともと好きなのと、小ぶりなサイズ感に惹かれてこちらを選びました。とても柔らかくて、やぎ革のなめらかな触り心地にびっくり。深さがちょうどいいので中身が丸見えにならず、自然と口が閉じてくれるのもいいですよね。内ボタンを付けることもできるのかもしれないけど、革だけで作り上げている素朴さがすてきです」
使い始めた頃はあまり重たい物は入れないようにしていたそうですが、今では家からお店までの通勤バッグとして、お財布、買い物用のエコバッグ、ポーチなどを入れているとのこと。何気なく置いただけなのに様になる佇まいや、くたっとなるフォルムも魅力的だとお話しくださいました。
そして恵さんに使っていただいたのは、スティールグレーのバスケット(Mサイズ)。オンラインショップで一目見た時からこの色味が気になっていたとのこと。
恵さん「A4の書類や雑誌などもするっと入るサイズ感で、持ち手が長めなので肩にかけて使うことも多いです。バッグ自体が軽いのと、持ち手に丸みがあるので、食い込んで痛くなるようなことも無く。まだ使い始めて数ヶ月ですが、真新しかったところから少しずつ表情が変わってきたように感じてどんどん愛着が深まっています」
素材自体の柔らかさや手編みならではのあたたかい風合い、そして重みや雨風に負けない丈夫さを兼ね備えたゴートメッシュ。使えば使うほど手に馴染み、暮らしに溶け込んでいく。そんな質感の変化もお楽しみいただけていたら嬉しいです。
自然素材のものが好き
粉花とRENの出会いは10年以上前のこと。今ではすっかり常連として通わせていただき、浅草蔵前エリアでものづくりを続けてきた仲間としても、粉花さんはとても大切な存在です。
真由美さん「初めてRENの皆さんが来店された時、『楽しそうなお店ですね』って言ってくれたことが本当に嬉しくて。今でも鮮明に覚えています。今回取材を機に改めてブランドの想いや商品についてお話を聞いて、こんなに種類豊富な革や形を取り揃えていたなんて!と感激しました。シーズンものもありながら、ずっと変わらない定番品を守り続けていて。普遍的であることって本当にすごいと思います」
恵さん「浅草周辺って、ものづくりが身近にある環境で過ごしてきたからか、自ずとものの作り方や素材のことが気になる人が多いと思うんです。私たちの実家では両親が靴用の革加工業を営んでいるのですが、RENのバッグを持ち帰ったら『軽そうでいいね』って母に狙われたり、母世代の知り合いからも『あらすてき』って声をかけられたりして早速注目を集めていました」
パンや革製品に限らず、自然素材を使ったものが好きだというお二人。粉花の店頭には一枚革から作られたレザーバスケットなどが飾られ、シンプルなものづくりへの愛情を代弁していました。
由来は、慣れ親しんだ神社の神様
粉花が面する富士通りは、富士山を信仰する浅間神社から浅草寺にかけて南北に伸びている小道で、浅草駅周辺の賑わいとは打って変わって物静かな雰囲気。真由美さんと恵さんはこの参道を幼い頃から何度も行き来してきたそうで、慣れ親しんだ景色の中にまさかお店を出すことになるとは、と今でも不思議な気持ちなのだとか。
恵さん「粉花という名前は、私たちが日常的にお参りしている富士浅間神社の御祭神・コノハナサクヤヒメからお借りしました。『このはな』という響きが先に決まって、それなら粉に花という当て字はどうだろう?ということで」
真真由美さん「いざ粉花としてオープンしてみたら、『フラワー(Flour・粉)とフラワー(Flower・花)が並んでいてかわいいね』と言われたり、中国語でもかわいらしい発音になることを教えてくださったりと、予期せぬリアクションをたくさんいただきました。この名前にして本当によかったよね」
-PROFILE-
粉花(このはな)
2008年に浅草観音裏でオープン。オーガニックレーズンとお水だけで育てた酵母と国産小麦でパンを焼き、地元浅草の日常に寄り添う人気店。販売は10:30〜売り切れ次第終了。
台東区浅草3-25-6 1階
定休:日・月・火・祝
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